Story of As Long As The Night Lasts

As Long As The Night Lasts

SHINTARO KONO, 2024

 

夜が静かに始まり、ゆっくりと朝を迎えるまでの時間を、光で表現しました。

GPSが内蔵され、世界のどこにいても太陽が沈んだ時に自動で点灯し、
夜が更けるにつれ片側から消えていき、夜明けと共に消灯します。

現代では感じることが難しい自然のリズムを、揺らめく光で夜が続く限り寄り添います。

 

制作年:2024年
サイズ:H8.5×W28×D7 cm
素材 :LED, アクリル板, アルミニウム

 

 

 

作品について

江戸時代までは、日没と日の出の時刻を基準とした「不定時法」という暦がつかわれていました。昼と夜をそれぞれ6等分し、各時刻でお寺が鐘を鳴らすことで町の人は時刻を把握していました。

つまり、夏と冬では時間のスピードが異なる、自然と調和した時間感覚のなかで人々の暮らしがありました。

明治維新以降、不定時法は廃止され、現在の24時間が一定のスピードで進行する定時法となり、自然のリズムと人々の生活は徐々に切り離されていきました。

私たちは、機械仕掛けに刻まれる均一な時間の中で生き、季節や一日の長さの変化に、かつてほど敏感ではなくなっています。

 

 

この作品は、現代の生活にそっと寄り添いながら、不定時法が宿していた自然との対話を、そして人々が感じていた「生きた時間」の感覚を、微かな光の変化を通じて呼び覚まそうとする試みです。

 

 

作品にはGPSが内蔵されています。置いてある場所の緯度経度を測定し、日の入りと日の出の時間を計算します。

日の入りと同時に24個の内蔵されたLEDが点灯し、夜が更けるにつれ片側から消えていきます。夜中0時にはちょうど半分点灯し、日の出と共に最後のLEDが消えていきます。

日本の東京-北緯35度東経139度付近では、12月の冬至の頃に日没が16時半と一番早くなり、6月の夏至の頃には19時と一番遅くなります。

これらの時期、日没や日の出の時刻は約2週間程度変化しません。一方、12月と6月の間の3月や9月ごろはほぼ毎日1分ずつ日の出・日の入り時刻が変化していきます。また、これに2ヶ月ほど遅れて気温の変化が到来します。こうして5月や11月が衣替えの季節になります。

 

 

内部にはLEDが24個並べられています。これらは時間の粒子であり、夜という現象の映写装置です。

点灯中はそれぞれのLEDが4096段階でランダムに調光され、有機的な揺らぎを生み出します。

1日を24時間に分割するという仕組みは、古代エジプトにて誕生し、今日まで引き継がれて、社会規範として君臨しています。


 

この作品は、そうした均一な時間の枠を解き、身体的な有機性を思い出すための試みです。