アーキプロダクツ・ミラノでの展示ご報告
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2026年4月のミラノサローネ期間中、Archiproducts Milano(アーキプロダクツ・ミラノ)にて空間プロジェクト「FÒCO」が公開され、SHINTARO KONOの作品3種を展示していただきました。
展示されたのは、「When Will The Wind Rise」4点と、「As Long As The Night Lasts」「The Blue Hours」各1点です。サローネ期間中だけでなく、その後も1年弱、Archiproducts Milanoで展示される予定です。
今回の展示を応援してくださった方々、来てくださった方々、ならびにArchiproductsの関係者の皆様、そして作品を選んでくださったStudiopepeの皆様にこの場を通じ改めて感謝を申し上げます。
2年ぶりのミラノへ
僕は別件でエンジニアとしてのお仕事のため、ちょうど同じ時期にミラノへ滞在できることになっていました。一昨年の4月も、初めてのヨーロッパ旅の最初の場所として3日間だけミラノを訪れており、再び行くことができてとても嬉しかったです。今回、仕事の合間合間で、何度か現地で展示を実際に見ることができました。
Archiproducts Milanoは、2016年のミラノデザインウィークに初めて開設された、Archiproductsという巨大なオンラインプラットフォームを、実際に人が歩き、座り、触れられる空間へと昇華させた常設拠点です。Studiopepe(スタジオペペ)は、ミラノを拠点に活動するArianna Lelli MamiさんとChiara Di Pintoさんが率いるデザインスタジオで、20年にわたり素材への探究を続け、詩と厳密さが共存するアプローチで知られています。お二人が4年間にわたり、四元素をテーマとしたインテリアのキュレーションプロジェクトを、この場所で行ってきました。
「土」、「水」、「空気」と、毎年テーマに沿った展示が行われ、その最終章として今年2026年は「火」を主題として扱った、「FÒCO. Living Notes by Studiopepe」というキュレーションが行われました。FÒCO(フォーコ)は古イタリア語で火を意味する単語だそうです。

Photo: Eller Studio, courtesy of Archiproducts
Archiproductsの方から連絡をいただいたのは、ちょうど1年ほど前、2025年の夏でした。そのときはArchiproductsのことを知らなかったので、建築家やデザイナーの方に聞いたところ、欧米では大きなインテリアのWEBプラットフォームとのことで驚きました。
サローネ期間中と、それ以降の1年間、僕の作品を展示してくださるとのお誘いでした。今年に入ってから、Studiopepeのお二人から実際に作品を選定していただき、4月のMDWに合わせ制作を行い、お送りしました。
「ミラノサローネ」といえば、聞いたことはあるけど、実際どこでどういった展示が行われているのか、数年前まではまったく知りませんでした。
日本で「ミラノサローネ」と呼ばれているものは、正確にはミラノデザインウィーク(MDW)という、毎年4月の1週間に行われる催し全体を指します。その中心が、郊外のローフィエラ地区にある本会場で行われる家具の見本市、「Salone del Mobile.Milano」です。
本会場は、デカめの体育館がいくつも並んでいるような、広大な場所で、1週間通ってもすべてを見切るのは不可能なほど広く、世界中からさまざまなブランドが一堂に会します。
一方期間中は本会場の他に、ミラノ市内でも様々な場所で展示やイベントが行われます。これらはフォーリサローネ(Fuorisalone)と呼ばれ、伝統的なブランドから気鋭のデザイナーたちが、ミラノの街の各所で趣向を凝らした展示を行います。
東京の山手線の範囲内の有名な街と、お台場のほうにあるビッグサイトで行われる1週間のお祭りのようなイメージでしょうか。

本会場の入口(2024年時)
今回僕の作品が展示されているArchiproducts Milanoはミラノ市内の南寄り、運河が近いトルトーナ地区という場所にあります。紅の豚でポルコの飛行艇が飛び立ったあの運河だそうで。
古くから工業地帯として発達した場所で、その工場跡地などを活用したスーパースタジオやBASEといった場所が有名な人気スポットです。
向かうには、最寄りのポルタ・ジェノバ駅を降り、正面の繁華街のほうではなく、駅の裏側へ大きく迂回し向かわなければなりません。交通量の多い街の中心部とはまた違った雰囲気を纏っており、道を覆うようにして展示やインスタレーションのスペースが広がり、若者たちが昼からお酒を片手にそのバイブスを楽しんでいました。

BASE Milanoの屋上より
2年前に初めてミラノに来た時も、大好きなドイツの照明ブランド「インゴマウラー」の展示がこの場所で行われていました。人の多さと、あしらわれた照明たちの中でお祭り騒ぎをしながらお酒をのむ。写真をとることなど忘れその場にずっといたいと思えた時間でした。
そんな熱気を感じられる中心のような場所にArchiproducts Milanoはありました。大きな展示会場となっている建物の道をはさむように、アパートのような建物が現れます。

本当にここに自分の作品が飾ってあるのか、最初はとても期待と不安が入り混じっていました。受付にSHINTARO KONOのロゴを見つけたときは胸が高鳴りました。東京の机のうえで考えて作ったものがいまイタリアのミラノにある。子供の晴れ舞台をみる親はこんな気持ちなのかなと感慨深さをもって足を進めました。
中に入ると、そこはショールームというよりはまるで、ハイセンスな家具であしらわれた誰かの家に遊びに来たかのように、連なった部屋を順に廻れるようになっています。たしかに、この建物はもともと20世紀初頭のアパートメントを改装したものだそうで、廊下は人がやっとすれちがえるくらいの広さで、階段は上る人と降りる人が交互に通行しないと通れないほどです。

Photo: Eller Studio, courtesy of Archiproducts
このちょっと迷路のような室内が、つぎつぎに現れる空間とインテリアたちがつくる世界観を切り替えるように働き、ワクワクしました。
しばらく探索していると、2階の広々としていて窓が開いている半外のような空間に、4つの「When Will The Wind Rise」が壁掛けで展示してありました。
さらに奥へと進むと、「As Long As The Night Lasts」の赤と青の光が棚に美しく設えてありました。
自分がつくったものがプロの手によって空間を飾っている。最初は嬉しさよりもその非現実的な感じと、なんだか気恥ずかしさが勝り、客を装いまじまじといったりきたりしながら眺めていました。

Photo: Eller Studio, courtesy of Archiproducts

Photo: Eller Studio, courtesy of Archiproducts
照明部門ではほかにLuceplanやTerzaniといったイタリアの高級照明ブランドが並びます。どれも詩的な美しさと高いエンジニアリング性を内包し、身の引き締まる思いと、その大きな大きな背中を、少し身近に感じられた瞬間でした。
重なっていく時間
FÒCOには「Living Notes」という副題が付けられていました。
異なるブランドの家具や照明を、単独の製品として並べるのではなく、生活空間というスケッチブックに書き留めていくように設え、1つの物語として体現されているようにも見え、その考え方は、自分が作品を”Living Equipment”(生活装置)と呼んできたことと、どこかで響き合っているように感じられました。
照明は、ただ部屋を明るくするためだけのものではありません。その光やオブジェとしての形状が、時間感覚や人とのつながり、そして自分自身とのつながりといった心へも作用します。
そしてそれはモノ1つによっておこることではなく、モノとモノの組み合わせ、それが置かれる空間の色や形、風通り、光の入り方、街の作られ方ともつながっています。
照明に限らず、時と場所を超え、人や空間に作用するものは他にどんなものがつくれるだろうか。新しい大きな問いとも出会えた気がしました。

ポルタ・ジェノバの運河は、かつて物を運ぶための水路でした。その隣に鉄道が通り、工場や倉庫がつくられ、使われなくなった建物は、やがてデザインやファッションの展示空間へと姿を変えていきました。
ヨーロッパの街を歩いていると、古いものが新しいものへ完全に置き換わるのではなく、レンガを少しずつずらして積み上げるように、それぞれの時代が輪郭を残したまま重なっているように感じます。
Archiproducts Milanoも、その古い街の中に、毎年新しい生活空間をつくり続ける場所でした。
その2026年の空間に、僕のつくったLiving Equipmentも重なることができました。
長い街の歴史から見れば、ほんの一瞬のことかもしれません。それでも、東京の机の上で考えたものがミラノへ渡り、この場所で誰かの時間を見守ることができる。そのことが、展示を見終えたあとも、しばらく嬉しく、不思議にも感じられました。
FÒCOは、ミラノデザインウィーク終了後も、1年弱展示されています。ミラノへ行かれる機会があれば、ぜひトルトーナの街とあわせて訪れていただけたら嬉しいです。

photo : 浅葉未渚
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Via Tortona 31, 20144 Milano, Italy
関連リンク
- FÒCO. Living Notes by Studiopepe — Archiproducts 公式ニュース(英語)
- SHINTARO KONO — Archiproducts ブランドページ
- FÒCO 設営写真 — Archilovers(Ph. Eller Studio)
- Mondadori Group プレスリリース(英語)
展示作品
- 風はいつ吹くのか — When Will The Wind Rise
- 夜が続く限り — As Long As The Night Lasts
- 夜が続く限り ― ブルーアワーズ — The Blue Hours